社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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法改正のその後の動きと令和7年版賃金調査の公開

2026.02

労働基準法改正案、通常国会への提出見送りへ

前2回にわたり労働基準法の改正案についてお伝えしてきましたが、昨年12月、上野厚生労働大臣が閣議後の記者会見において、同改正案について通常国会への提出を見送ると表明しました。

この改正案は、働き方改革の一環として、健康確保およびワークライフバランスの重視を目的としたものでした。一方で、高市首相は、深刻な人手不足への対応策の一つとして、就任当初から労働時間規制の緩和について検討を指示しています。今回の法案先送りにより、改正の方向性について改めて検討されることになります。今後の動向を注視しながら、随時、皆様へご案内してまいります。

中小企業の賃金事情(令和7年版)が公開されました

東京都では、従業員数10人~299人の都内中小企業を対象に賃金に関する調査を毎年実施しています。本調査は、令和7年7月31日現在の状況をもとに「賃金」、「賞与・諸手当」、「モデル賃金」、「初任給」、「労働時間」、「休日・休暇」等についてまとめられています。

社労士業務では、給与制度の設計や給与額のご相談を受ける機会が多くあります。本調査は給与水準を検討する際の参考資料の一つとして非常に有効です。今月は、令和7年の調査結果について、()内に令和元年の調査結果を併記し、比較しながらご紹介します。

定期昇給、ベースアップ

過去1年間に定期昇給を「実施した」と回答した企業は74.4%、(令和元年76.8%)でした。また、ベースアップを「実施した」と回答した企業は56.6%(令和元年30.3%)、現状維持は36.2%(令和元年60.6%)となっています。定期昇給の実施割合は、令和元年と同程度の水準ですが、ベースアップを実施している企業は、令和元年と比較すると大幅に増加しています。最低賃金が毎年増額改定されているため、従業員の給与を一律で引上げる対応を行う企業が増えているものと考えられます。今後も昇給を継続していく企業は多いと予想されます。

住宅手当/家族手当

集計企業のうち、住宅手当を支給する企業は、35.9%(令和元年40.2%)でした。支給企業の43.9%(令和元年53.3%)は住宅の形態に関わりなく、一律支給をしており、「扶養家族あり」18,822円(令和元年18,361円)、「扶養家族なし」17,363円(令和元年15,606円)となっています。

また、家族手当を支給している企業は、42.0%(令和元年54.8%)でした。支給企業の88.8%(令和元年91.6%)は、扶養家族ごとに、異なる支給額を設定しており、平均支給額は、配偶者11,033円(令和元年10,636円)第1子5,928円(令和元年5,827円)第2子5,574円(令和元年5,419円)第3子5,919円(令和元年5,464円)となっています。生活補助的・属人的な手当である住宅手当・家族手当は、支給企業数は令和元年と比較して減少傾向にある一方、支給額は物価高の影響もあり、微増傾向であることが分かります。

初任給

初任給を学歴別にみると、高校卒208,783円(令和元年183,753円)、高専・短大卒220,439円(令和元年193,866円)、専門学校卒220,303円(令和元年196,631円)、大学卒233,725円(令和元年210,713円)となりました。最低賃金の上昇に伴い、初任給は全体として金額が増加傾向にあります。大企業では初任給30万円などといった報道も見られますが、中小企業においては同様の引き上げが必ずしも現実的とは限りません。そのため、初任給の水準だけでなく、入社後の昇給カーブや評価制度を明確に示すことが、人材確保・定着の観点から重要となります。賃金制度全体を見直す契機として捉えることが有効です。

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/data/koyou/chingin

出所:東京都産業労働局 「中小企業の賃金事情(令和7年版)」「中小企業の賃金事情(令和元年版)」

※上記資料をもとに当事務所にて比較・編集