社会保険労務士法人 トレイン

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2025年度最低賃金改定に関する動向、最低賃金改定時の注意点

2025.8

2025年度最低賃金改定に関する動向

最低賃金を決定するための厚生労働省中央最低賃金審議会が、7月11日より2025年度の最低賃金引き上げの目安について議論を開始しました。政府は「2020年代に全国平均時給1500円」を目標として掲げており、これは今後5年間で平均90円(約7%)の引き上げが必要となる計算です。

ご参考までに、現在の最低賃金は全国平均時給で1055円、一部の関東地方では以下の金額です。

厚生労働省の調査によると、2025年5月までの現金給与総額は41か月連続でプラスとなっていますが、物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は前年同月比で2.9%減少、5か月連続のマイナス(年単位では3年連続のマイナス)です。一方、企業側は賃上げや社会保険料の負担が中小企業経営を圧迫することから、慎重な姿勢を見せています。複数の経済エコノミストは、2025年度の最低賃金額について、前年度の5%台前半(51円程度)を上回る引き上げが行われる可能性がある、と予想しています。

企業が注意すべきこと~最低賃金との比較のための時給単価の算出

10月に最低賃金が変更されると、その月(10月1日以降労働した賃金)から新しい最低賃金が適用となります。最低賃金と現行賃金との比較は、以下の通り行います。

1.月給制や日給制の場合、以下の算式で時給を換算します。

月給制:月給 ÷ 月平均の所定労働時間

日給制:日給 ÷ 1日の所定労働時間

各年の年間休日によって所定労働時間数が変動するため、年間所定労働日数及び年間所定労働時間数を更新する際にも注意が必要です。

2.最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。次の賃金を含めないことにも注意しましょう。

  1. 臨時に支払われる賃金
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 時間外割増賃金
  4. 休日割増賃金
  5. 深夜割増賃金
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

3.最低賃金には以下の2種類があります。

  1. 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められ、企業の所在地に応じて適用
  2. 特定(産業別)最低賃金:特定の業種に対して設定

各産業の労使が「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合、特定(産業別)最低賃金が設定されます。(特定最低賃金の一覧001377033.pdf

仮に地域別最低賃金を上回った賃金を企業が従業員へ支払っていても、「特定(産業別)最低賃金」を下回っていた場合、最低賃金を支払っていないこととなってしまい、上限30万円の罰金が課されます。

厚生労働省特定最低賃金のホームページで特定最低賃金についても確認しておきましょう。