教育訓練休暇給付金が新設されます(2025年10月から)
2025.10今年の最低賃金の改定額が発表され、ますます企業の人件費負担が増えてきます。人一人の労働時間の制限がある中でいかに効率よく成果を生みだしてもらうかが、企業発展の鍵となってきます。いくらAIが進んだとしても、「人」が0(ゼロ)になることはなく、AIを使いこなす「人」が必要です。特にAI・DX・新しい働き方などによって仕事の内容が変化する中で、従業員が再教育を受けて新しい役割を担えるようになるための学び(リスキリング)が注目されています。「人への投資」として注目される雇用保険の新たな給付制度「教育訓練休暇給付金」の概要をご説明します。
教育訓練休暇給付金の概要
対象者
雇用保険の一般被保険者(高年齢被保険者・短期雇用特例被保険者は対象外。)であり、被保険者期間が5年以上ある人
支給要件
以下のすべての要件を満たすことが必要です。
- 休暇開始前の2年間に、被保険者期間が12か月以上あること。
- 教育訓練受講のための休暇で、連続して30日以上の期間を取得すること。
- 従業員の自発的な申出により、事業主の承認を受けて取得する「無給」の休暇であること。
- 就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇であること。
給付される金額
- 失業給付の算定方法と同様、原則休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます。
休暇開始日の前日を離職日とみなして算定されます。
給付される日数
雇用保険被保険者期間により下記の日数を上限に休暇取得日数となります。
-
- 雇用保険被保険者期間
-
5年以上10年未満・・・90日
10年以上20年未満・・・120日
20年以上・・・150日
対象となる教育
- 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校
- 教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
- 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの
(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)
注意点
- 休暇取得中の社会保険料の免除はありません。
- 将来、失業したときに受け取る失業給付が休暇取得後は、受給できない可能性があります。
(育児休業・介護休業・高年齢雇用継続給付も受給が受けられなくなる可能性もあり)
この制度では、30日以上の連続した休暇であることが要件であり、教育訓練に専念する制度であるため、教育訓練休暇期間中に会社が勤務を求めることは原則、認められていません。また、社員が自発的に教育訓練を希望しても、企業に教育訓練休暇の制度が無ければ、この給付金を受け取ることができません。
さらに注意が必要なのは、教育訓練休暇制度を利用した場合は、休暇開始日より前の雇用保険被保険者期間はなかったものとみなされるため、一定期間勤務しないと失業したときに受給できる失業給付が受給できなくなります。休暇を取得する従業員も十分理解した上で利用しないとトラブルの元となります。教育訓練休暇制度をすでに取り入れている企業は再度運用を見直すよい機会です。社員が取得する際にメリット・デメリットを説明できるように準備をしておきましょう。厚生労働省が行っている令和6年度能力開発基本調査によると、教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%、導入予定がある企業を含めても16.6%にとどまっています。今後、人一人の労働力に付加価値をつけるために企業は何ができるのか。「攻めの人事戦略」を考えることが求められているように感じます。
