社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

労働法の基本講座第1回「労働時間とは?」

2013.03

今回から数回にかけて、理解しているようでわかっていなかった労働基準法をはじめとする労働法の基本について、労務管理の実務的な視点から解説します。第1回目の今回は「労働時間とは?」です。

1. 労働時間とは?

労働時間とは、実際に仕事をしている時間はもちろんのこと、会社や上司などの指揮命令下にあれば、実際に作業をしていない時間も労働時間になります。ただし、会社の拘束下にあっても、休憩時間のように社員が業務を離れて自由に過ごせる時間は労働時間とはなりません。会社や上司の指揮命令下にあって、社員が自由に過ごせない時間が労働時間と言うことになります。
次のような場合が労働時間となります。

  1. 実際に業務をしている時間
  2. 業務前の着替えや準備をしている時間や業務後の後片付けや清掃の時間
  3. 業務と業務の間の待機時間、手待ち時間(社員が自由に過ごすことはできない時間)
  4. 業務のための移動時間(通勤時間や出張先へ赴くための時間は除く)
  5. 業務命令による全員参加の旅行やリクリエーション参加の時間
  6. 社名による研修やセミナーを受けている時間

*健康診断受診の時間は労働時間?・・・健康診断受診の時間は、会社に課せられた社員の健康の確保を目的として行われるものですが、業務遂行との関連において行われるのではないので、労働時間として扱わなくてもよいことになっています。ただし、労働時間と同じ扱いをし、その時間についても給与を支払うケースが多いようです。

2. 法定労働時間と所定労働時間とは?

「法定労働時間」と「所定労働時間」。よく耳にすると思いますが、その違いを説明します。

(1) 法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法で定められたそれ以上労働させてはならない労働時間の上限時間をいい、1日については8時間、1週については40時間が法定時間となります。実際には、多くの会社でこの法定労働時間を超えて社員が仕事をしています。これは法定時間外労働(いわゆる残業)となり、法定労働時間を超えて労働させる場合は、会社と社員の過半数を代表する者との間で労使協定を締結し、時間外労働をさせる対象社員、対象職種、時間外労働をさせる理由、1日、1月、1年当たりの時間外労働をさせることが出来る限度時間を定め、労働基準監督署に届け出る必要があります。(この労使協定が36協定です。)
*時間外労働の法令上の基準時間・・・36協定を締結する際に時間外労働をさせることが出来る時間を定めますが、この時間外労働の時間には法令で定められた基準の上限時間があります。1月につき45時間、1年で360時間となっています。1日についての上限時間は特に定めがありません。

(2) 所定労働時間

所定労働時間とは、会社が任意定めた社員が労働すべき時間のことをいいます。一般的には、会社で始業、終業時間を定め、その間の時間で休憩時間を除いた時間が1日の所定労働時間となります。
1日8時間であったり、1日7時間であったり、それぞれの企業の業態業務の内容、企業運営上の考え方などにより所定労働時間を定めています。当然の事ですが、所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で定められるこ とになります
次回は、休日および時間外勤務についてです。