社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

日々猛暑が続いております。今月は、ご相談の多いメンタル不調者への対応についてお伝えします。

メンタル不調と思われる社員がいた場合の休職までの対応について

2023.8

怪我や病気と違い、メンタル不調では各不調社員の状況は様々です。その社員に合わせた対応が求められます。以下に大まかなメンタル不調社員への対応の流れを解説します。

一般的な流れ

社員自身に体調不良の自覚がありの場合

  1. 会社が本人に病院への受診を促し、社員から休職の申出がある場合は、会社に休職願を提出してもらう
  2. 会社は、社員の就業状況や本人の申出および診断書を基に休職期間(※1)を決定し、休職通知を社員に交付する
  3. 休職期間、休職期間中の連絡や社会保険料の支払い方法、復職の判断、復職のプロセス、復職できない場合の取扱いなどを通知する
  4. 休職期間スタート(給与の支給がない場合は、傷病手当金の申請を行う。)

(※1)休職期間は、労働基準法などの法律に規定されているものではありません。会社独自の制度となり、休職制度自体がない会社もあります。この休職期間は、会社に所属しながら一定期間、業務を免除され休業する期間です。各会社の取り決めによりますが、一般的には、就労していない期間給与は支給されないことが多く、一定の要件を満たせば傷病手当金の申請をすることで、生活保障されます。社員は、安心して療養に専念することができる期間と言えます。

本人の自覚がなく、メンタル不調だと思われる場合の対応

などなど・・・

社員は自覚がないため、病院受診を促しても拒否することが多くあります。ただ、前述のような状態では、労務提供が不完全であると判断せざるを得ません。このような場合、会社が「様子を見ましょう」と、長期間に放置状態になることがあります。これでは、本人の健康も悪化する一方であり、周りの社員も業務をカバーすることで長時間労働となり、第2のメンタル不調社員を生み出すことなりかねません。また、この状況にきちんと対応しない会社に対して、不満がたまり人材離れも進みます。対応策としては、各個人の状況に合わせて様々ですが、一例をご紹介します。

(1)メンタル不調と思われる社員に対して、最近の様子から体調を整えるためにも病院の受診を強く進める。

メンタル不調により業務遂行に支障が出ている場合、病院受診を強く勧め、大病の早期発見につながったこともあります。会社が病院を進めることは、正常な業務運営に支障が出ている以上、ハラスメントには当たりません。

(2)病院をなかなか受診しない社員は、(就業規則に明記が前提ですが)業務命令であることを伝えましょう。

会社の近くの病院を確認しておくのもいいと思います。1人で不安な方の場合は、会社の人が同行することもあります。

(3)業務の継続が困難と会社の判断で休職させる。

どの程度通常の業務が行えていないのか、社員への指導や休職判断となった証拠は必ず残しておきましょう。社員から本人が希望しない休職命令はハラスメントであるとして訴えられないためにも重要です。本来、休職は、退職を前提とする休みではなく体調を整えるための療養期間ではありますが、特にメンタル不調社員については、最悪、トラブルなく退職してもらうための猶予期間と考えざるを得ないケースもあることを意識してください。会社は、社員の安全と健康を確保することが義務付けられています。メンタル不調社員を出さないためにも、会社側は、ハラスメント防止をはじめ業務体制を常に見直し、健全な就業環境を構築し、また社員側も自身のメンタルの健康を保持増進するよう社員に周知することも必要かもしれません。

傷病手当金の受給状況

最後に、休職中の傷病手当金の受給状況を傷病手当金の受給の原因となった傷病別に件数の構成割合をみると、精神及び行動の障害が全体の32.96%を占めており、年々増加傾向です。