社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

年末年始手当支給にご注意ください

2020.12

(1)注意点その1(同一労働同一賃金の問題)

毎年、年末年始に勤務をした場合に、休日に勤務した場合に支払われる割増賃金のほかに「年末年始手当」を支給するケースがあります。支給する場合は、支給対象者が正社員のみで、契約社員やアルバイトには支給しないという運用になっているケースが多いのではないでしょうか。同一労働同一賃金の考えから、支給要件、支給額などの待遇差については、注意が必要です。

日本郵便で郵便物の集配や集荷業務に従事している時給制の有期契約社員が、無期契約社員との手当等の待遇差を不当として争った裁判において、今年10月15日に最高裁判決で有期契約社員と無期契約社員で年末年始手当が支給・不支給が異なるのは不合理であると判決がだされました。理由としては、以下の3つの点で有期契約社員と無期契約社員との差がないと認められたからです。

(1)
年末年始手当は、郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであるが、12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したことに対して支給されており、その支給金額も、実際に勤務した時期と時間に応じて一律である点。
(2)
多くの労働者が休日として過ごしている期間において、業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される慰労としての対価の性質を有するものであった点
(3)
正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず支給されている点

判決では、契約期間の長短にかかわらず、上記の支給要件であれば、支給すべきとされました。有期契約社員と無期契約社員と比較し、大きな相違がないにもかかわらず、雇用形態の違いのみで待遇差が生じていないか社員間のトラブル回避のために確認が必要です。

(2)注意点その2(年末年始手当の社会保険上の取り扱い)

年末年始手当は、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものに該当し、賞与とみなされ届出が必要になります。現在の年金調査等では、本来なら賞与扱いであるにも拘わらず、賞与の対象とされず支給している手当について、厳しく調査され、2年間遡及して申告するように指導を行います。⇒例えば、年末年始期間について休日割増賃金を支給することとした場合は、通常の残業代と同様、賞与ではなく、給与としての取扱いとなります。年末年始期間について、休日割増賃金の割増率を増額することも可能です。なお、労働の対償でない慶弔見舞金等は、賞与支払い届の対象外です。

最後に

今年は、新型コロナウィルスに振り回された1年となりました。緊急事態宣言が発令され、テレワーク勤務を導入された会社も多いのではないでしょうか。導入当初は、社員にとって通勤によるストレスがなくなり、良い面もありましたが、長期化するに従い、徐々に規則的な生活リズムか崩れ、部署間のコミュニケーションが希薄になりがちとなりました。会社にとっても在宅における社員の業務状況の把握が難しく、業務の評価基準も見直しが必要な状況になりました。実際に慣れない労働環境で仕事の仕方に戸惑いを感じ、体調不良に陥るケースが増えており、テレワーク勤務から通常勤務に戻す企業も増えてきました。ただし、本格的な冬の到来に合わせて第3波の感染拡大で心配な状況が続きます。再びテレワーク勤務の拡大や時差出勤、取引先等の往来自粛などを徹底し「会社が社員の安全や健康を第一優先にしている」と社員が安心して仕事ができる環境整備が必要です。来年はオリンピックも予定されていますし、ワクチンの認証などの光も見えてきました。各種助成金や給付金を活用し、多様に発想を転換し、この苦しい時期をのり切りましょう。

本年もご愛読ありがとうございました。