社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

新型コロナウィルス感染症に起因する雇用への影響について

2020.10

厚生労働省の調査で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で解雇や雇止めになった労働者が、9月18日現在で59,673人(見込みを含む)に上ると発表しました。業種別では、飲食業が最も多く9,814人、次いで製造業が9,561人、小売業8,526人、宿泊業7,818人となっています。

都道府県別では、東京(15,745人)、大阪(5,388人)、愛知(3,273人)、北海道(2,412人)の順で多い状況となっています。また、観光業や製造業が盛んな地域についても解雇等の労働者数が増加傾向にあることが、調査から読み取れます。

今後も感染者数が減らず長期化する状況となり、雇用環境への影響は深刻となることが予想されます。今月は、雇用保険加入者が退職された場合に受け取る失業給付についても新型コロナウィルス感染症の特例がありますので解説します。

失業給付の給付日数が60日延長されます(ただし、35歳以上45歳未満の方で給付日数270日の方は30日、延長※45歳以上60歳未満の方で給付日数330日の方は30日延長されます)

対象となる方:令和2年6月12日以後に失業保険を受け終わる方

離職日 対象者
令和2年4月7日(緊急事態宣言発令以前) 離職理由を問わない(全受給者)
令和2年4月8日~令和2年5月25日
(緊急事態宣言発令中)
  1. 倒産、解雇等の理由により退職した方
  2. 有期契約の労働者で更新を希望したにも関わらず、更新されなかったことによる退職した方
  3. 転居・婚姻等による自己都合退職した方
令和2年5月26日(緊急事態宣言全国解除後) 新型コロナウィルス感染症の影響により(上記1.2.3)退職を余儀なくされた方

退職者が失業保険を受給する際に、窓口でヒアリングを行い、上記の特例の適用をハローワークが判断します。※ただし、積極的に求職活動を行っていない方については特例の対象外となります。

自己都合退職の場合の失業給付が受給できるまでの期間が短くなります

今まで自己都合で退職した場合、失業給付を受けるためには、ハローワークに求職の申出を行い待機期間7日と3カ月の給付制限期間がありました。来月10月1日以降に自己都合で離職された方は、3カ月の給付制限期間が2か月に短縮されます。

従来:
退職日→待機期間7日+給付制限期間3カ月→支給対象期間スタート
10月1日以降:
退職日→待機期間7日+給付制限期間2カ月→支給対象期間スタート
※ただし、10月1日以降5年間のうち、2回までの離職に限ります。

企業においては離職票の作成など実務上、直接的に影響はありませんが、退職者に対し、アナウンスをすることが必要です。現在のコロナウィルス感染症の影響で退職者が増加傾向にあり、退職し無給状態にもかかわらず失業給付を受けられない期間が長引けば就職活動も出来ず、通常の生活にも支障をきたすことがあります。このような課題に対応するためのものです。

ただし、懲戒解雇など労働者本人の責に帰すべき重大な理由で退職された方は、これまで通りの3ヵ月の給付制限期間となります。

※なお、令和2年9月30日以前の自己都合退社は、今まで通りの3ヵ月の給付制限期間となります。