社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

働き方改革関連法案が国会で成立

2018.08

今月は、6月29日に国会で成立となった働き方改革関連法の主なポイントをお知らせします。関連する法律は、(1)労働基準法 (2)労働安全衛生法 (3)労働時間等設定改善法 (4)労働者派遣法 (5)パートタイム労働法 (6)労働契約法 (7)じん肺法 (8)雇用対策法 以上の8本の法律が一斉に改正されることになります。

時間外労働の罰則付き上限規制の導入 大企業:2019年4月 中小企業:2020年4月より施行

施行日以後の期間のみを定めている協定について適用される予定です。現在の36協定では、特別条項を結ぶことで、時間外の制限に上限がなく協定時間を超えて労働させたとしても罰則がなく、事実上青天井の状態でした。この度の改正で上限が明確化され、この上限に違反し悪質な場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰則が科されることになりました。時間外労働の上限時間については、下記の通りです。

上限時間の原則:

1か月 45時間 1年 360時間(通常予見されるものに限る)
特別条項を定めない場合は時間外労働+休日労働時間数が1か月100時間未満および2~6カ月の平均の労働時間数80時間を超えない

特別条項の上限時間:

(通常予見することができない業務量の場合)

  1. 時間外労働+休日労働時間数が1か月100時間未満
  2. 1年間 720時間 (休日労働は除く)
  3. 1か月45時間を超えることができる月数は6回まで
※上記2.で、1年間720時間となっておりますが、休日労働は含まれておりませんので、時間外労働+休日労働の合計最大960時間(80時間×12カ月)の労働が可能となっています。
※今までは、休日労働については別カウントとされていましたが、改正後は、休日労働も含めて上限時間が定められていますので、法律違反とならないよう、注意が必要です。

脱時間給制度の創設(高度プロフェッショナル制度) 2019年4月より施行

年収1,075万円以上の高収入の金融商品の開発業務、アナリストの業務、コンサルタント業務の専門職について、労働時間・休憩・休日割増や深夜割増の規制から適用除外する制度です。導入については、労働者本人の同意が必要となります。こちらの制度については、長時間労働につながる危険性があることから、使用者には、1年間に104日以上、4週間に4日以上の休日を与える義務や健康管理時間の状況や健康診断の実施(疲労の蓄積・心身の状況)の義務、産業医の面接指導など保健機能の体制強化が求められます。

インターバル制度の努力義務 2019年4月より施行

会社を退社してから次の出社まで一定のインターバル(EUでは11時間のインターバル)を設定する努力義務が課せられます。努力義務ですが、深夜残業の削減や健康な生活のために労働者の業務の見直しを進め、制度を導入されることをお勧めします。

同一労働同一賃金の実現 大企業:2020年4月 中小企業:2021年より施行

前月の人事労務だよりでご紹介いたしました正社員と非正規労働者の不合理な待遇差が禁止されます。差が生じる場合には、労働者に対して十分な説明ができるように準備が必要です。判例では、賃金項目ごとに支給の理由付けがされ、賃金規程等の定めが処遇格差の不合理性判断の基準となっています。

年次有給休暇の確実な取得 平成31年4月より施行

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現のため、年次有給休暇の確実な取得の促進について改定が行われます。年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者が対象となり、年休のうち5日間について、確実に取得させなければなりません。ただし、労働者自身の取得により、5日以上取得されているのであれば、特に追加で取得を促す義務はありません。現段階から有休管理簿など確認をお勧めします。

★関連法成立となりましたが、詳細については不明確な部分も現段階では多いです。随時ご連絡致します。