社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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私傷病休職からの復帰のためのリハビリ勤務

2018.05

私傷病休職者の休職期間満了にあたり、職場復帰の可否の判断や方法についての問合せを多くいただきます。
今回は、「リハビリ勤務制度」による職場復帰について解説します。

1.「リハビリ勤務」の2つの考え方

リハビリ勤務については、法律上の定義や定めはありません。各企業の考え方でその制度内容を決めて運用します。一般的に「リハビリ勤務」の制度としての内容には次の二通りの考え方があります。

(1)療養の一環・・・休職中の療養(リハビリ)の一環としてのリハビリ勤務

この場合のリハビリ勤務は、職場復職の可否を判断するため休職中のリハビリの一環として通勤や職場への適応状況を確認するとともに、休職者が自分の体調回復の程度を把握し、職場復帰のイメージつかんでもらうための、いわば復帰準備リハビリをしてもらう制度です。

(2)職場復帰の方法のひとつ・・・本格復帰のための慣らし復帰、お試し復帰

いきなり休職前の仕事に復帰し、原職に就業することに会社側もしくは復帰者が不安がある場合に、徐々に職場環境や業務に慣らしていき、復帰後の体調や職務適応力などを確認しながら、慣らし運転的に業務を行い職場復帰の可否や別の職への転換等を検討、判断するものです。

2.それぞれのリハビリ勤務の特徴、留意点

(1)療養の一環としてのリハビリ勤務

趣旨・方法

リハビリ勤務とは言え、あくまでも復帰に向けた休職中の療養(リハビリ)の一環で、主治医や産業医と相談のうえ休職者の意思にすべてを委ねて行います。会社としては職場復帰の可否や復帰後の適応可能業務、職場環境の改善などの判断、検討を行う目安に、社員は自分の機能回復の程度を確認しながら復帰の可否や時期の判断が行え、また復帰前から職場の雰囲気に慣れることにより精神的緊張の緩和など復帰への自信付けとするものです。

業務性

会社まで通勤してみる、会社に滞在する、職場の雰囲気を確認する、軽易な業務がどの程度できるか試してみる、疲れたらいつ帰っても構わないし、体調が優れなければ出社しなくてもかまいません。すべて社員の気持ちや体調に委ね、会社は一切の指示や命令を行いませんので、業務には該当せず、あくまでも休職中の療養として扱います。

傷病手当金

あくまでも、休職中の療養の一環で出勤して何か業務に触れても労働にはあたらず、賃金も発生しません。休職中ですので傷病手当金を受給することになります。

(2)職場復帰方法の一つとしてのリハビリ勤務

趣旨・方法

この場合は、原職ではなくても一旦復職し、体調や休職中のブランクを埋めるために徐々に業務に慣らしていくことが目的となり、会社、本人双方が体調や業務遂行能力の回復具合や、または原職復帰の可否、その他の業務への転換の必要性などを検討、判断します。

まずは出勤、次に軽易な業務を短時間の勤務時間就業し、徐々に時間を延ばし、原職に近い業務への移行を、一般的には1週間から1ヶ月くらいの間で行います。

業務性

職場復帰し、軽易な業務に従事する場合でも、会社の指揮命令下で就業することになります。リハビリ勤務制度に基づき、労働を開始しますので、当然、賃金も発生します。会社は、通常の労働者同様、適正な労務管理、安全配慮義務等が求められます。

傷病手当金

たとえ軽易な業務であれ職場復帰することになりますので、傷病手当金の受給要件である労務不能には該当しなくなり、賃金が少額であっても傷病手当金は受給できません。