社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

改正労働安全衛生法について

2015.01

精神障害を原因とする労災認定件数の増加など、最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に則し、H26年6月に労働安全衛生法(以下「安衛法」という)が改正され、H27年以降、施行される予定です。
今回は、その主な改正内容を紹介します。

1.化学物質についてのリスクアセスメントの実施の義務化(平成28年6月までに施行予定)

  1. リスクアセスメントとは、一定の危険性・有害性の確認されている化学物質で安衛法第57条の2および施行令第18条の2に定められた640の物質の危険性または有害性等の調査をいいます。
  2. リスクマネジメントの結果に基づき、安衛法令の措置を講ずること、および労働者の危険又は健康障害を防止するための必要な措置を講ずることが努力義務となります。

2.ストレスチェックの実施の義務化(平成27年12月までに施行予定)

  1. ストレスチェックとは、常用労働者に対しておこなう、医師や保健師等による心理的な負荷の程度を把握するための検査をいいます。検査の項目は、今後標準的な項目が示される予定で、年に1回の実施が義務化される見通しです。ただし、労働者数50人未満の事業場は当分の間、実施が努力義務となります。
  2. 検査結果は、直接本人に通知され、本人の同意なしに事業者に提供されることは禁止されます。
  3. 検査の結果、高ストレス等の判定を受けた労働者から申し出があった場合、医師による面接指導の実施が事業者の義務となります。申出を理由として不利益な取り扱いは禁止されています。
  4. 3の面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴いて必要な就業上の措置を講ずることが義務付けられます就業上の必要な措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、業務の転換、労働時間の短縮、深夜業務の回数を減らす等の措置をいいます。

3.受動喫煙防止の努力義務化(平成27年6月までに施行予定)

  1. 室内またはこれに準ずる環境下で、受動喫煙を防止するため、事業者や事業場の実情に応じ、全面禁煙、喫煙室による空間分煙、換気設備の設置等の必要な措置を講ずることが事業者に義務付けられます。
  2. 中小企業が喫煙室を設置する場合、費用の1/2(上限200万円)の助成を受けることができます。
    対象は、ア)一定の基準を満たす喫煙室の設置、イ)一定の基準を満たす換気設備の設置(宿泊業、飲食業に限る)となります。申請書にて、設置計画の内容について認定を受けたうえで、設置の工事や支払いを実施します。その後設置の実績を報告書にて報告し、助成金を受給します。

4.重大な労働災害を繰り返す企業に対し、厚労大臣が指示、勧告、公表を行う制度が導入されます。
(平成27年6月までに施行予定)

  1. 重大な労働災害を繰り返す企業に対して、厚労大臣が、「特別安全衛生改善計画」の作成を指示することができるようになります。
  2. 重大な労働災害とは、死亡災害や障害等級第1級から第7級に該当する労働災害を想定しています。
    3年間に同一企業の複数の事業場で同様の災害が発生した場合に対象となります。
  3. 特別安全衛生改善計画の作成指示に従わない場合や、計画内容を守っていない場合等に、厚労大臣が必要な措置をとることを勧告し、勧告に従わない場合には、その旨公表することができるようになります。

5.その他の改正事項

  1. 大規模工場等での建設物、機械等の設置、移転等に伴う事前届け出の廃止(平成27年12月まで)
  2. 電動ファン付呼吸用保護具が型式検定、譲渡制限の対象となります。(平成27年12月まで)
  3. ボイラー等危険機械等の検査機関として、日本国内に事業所のない機関も登録できるようになります。