社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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社員の出張の取り扱いについて

2014.08

今回は、社員が出張した際の労働時間や賃金、出張旅費の取り扱いについて解説します。

1.出張の定義を明確にしましょう

何をもって出張とするか、法的な規定は特にありません。従ってどのようなケースを通常の外出として扱い、どのようなケースを出張として扱うかは、会社が就業規則や出張旅費規程等で任意に定めることになります。
具体的には、次のような基準により出張を定義することが一般的です。

・減給の制裁に該当する事案について、1事案につき給与日額の半額が上限

・一定期間内に減給の制裁に該当する事案が複数ある場合は、月額給与の10%が上限

先にも述べましたが、減給の制裁は、1事案について1回のみ行えます。ですからある制裁事案について、数か月間にわたり減給の制裁を行うことはできません。「減給○ヶ月」などということをよくニュースで耳にしますが、これは労働基準法が適用されない公務員や会社の役員などの話です。

  1. 移動距離により定義する・・・基準例:目的地までの直線距離100km超
  2. 移動時間により定義する・・・基準例:目的地までの移動所要時間2時間30分超
  3. 出先での活動内容で定義する・・・基準例:業務・視察・研修などの活動区分

2.出張中の労働時間と賃金

出張中の1日の労働時間については、時間外労働が必要となるような特段の業務指示がない限りは、所定労働時間勤務したものとみなします。時間外に労働することが必要な業務指示があり、業務遂行した場合には、時間外の割増賃金の支払いが必要となります。

3.出張中の休日の取り扱いと賃金

出張中の休日についても、当該休日に労働が必要になる特段の業務指示がない限り、休日を取得したものとし労働日とはみなしません。特段の業務指示があった場合には、休日勤務とし割増賃金の支給が必要です。

4.移動のみに使用した休日の取り扱い

月曜日からの出張先での業務のため、日曜日に前乗り前泊のため、移動のみに使用した休日については、法令上も労働したとはみなさず、休日勤務として扱いません。業務のための移動とはいえ、会社の指揮命令下にはなく、一定の制限があるにせよ概ね社員が自由に使用できる日であるからです。

5.出張旅費

一般的に出張旅費には次のようなものがあります。

  1. 交通費・・・移動のための交通機関の乗車料です。通常は領収書の添付等、費用の証明書類を提出させ、実費支給します。
  2. 宿泊費・・・宿泊出張の際の宿泊費用です。基本的に実費精算しますが、費用に上限等を設けるケースや金額を一律設定するケースもあります。
  3. 日当・・・出張先での食事代等の出費を補てんする意味で支給される賄費用です。役職や出張先別に金額を設定する場合が多いです。会社が任意に支給を決定できるため支給しない会社もあります。

(1)、(2)については、得意先随行の場合、費用を第三者が負担した場合などの取り扱いを定める必要があります。(3)については、前述の移動のみに使用した休日についても支給する場合があります。また午後出発や午前帰着などの場合は、通常の日当の1/2のみを支給するなどの規定を設けることも問題ありません。

6.出張中の傷病

一般的に移動または業務中であれば、労災保険の適用を受けます。また傷病の療養のため出張先に滞留する場合の宿泊費や日当の取り扱いを定める必要があります。家族等が出張先に赴く際の費用をどう取り扱うかなども定めておくとよいでしょう。

7.その他留意点

出張旅費の申請・旅費精算手続き、出張報告の方法、出張先での観光等のための休暇取得の可否や出張における自家用車の使用に関する取り扱いなどは、決めておくべきでしょう。