社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

試用期間

2014.06

今回は、社員を採用した際の一般的に設けられる試用期間について解説します。

1.試用期間とは?

企業が雇い入れ後の一定期間に、長期雇用をする社員の適性や能力を確認する期間を言います。社員として本採用することに重大な問題がないかどうか、企業は試用期間における職務遂行状況などから確認します。試用期間の長さは、3か月間が一般的で、長くても6ヶ月間くらいまでが妥当とされています。

2.試用期間の性格を理解する

1で述べたとおり、試用期間は雇い入れた者が正社員として適性があるかどうかを見極める期間ではありますが、試用期間を設けるとは言え、期間の定めのない雇用、または一定(例えば1年間)の期間の有期雇用として労働契約は成立・開始しています。その上で試用期間中は、企業側に解約権が留保されている解約権留保付労働契約期間とみなされています。ですから、労働契約自体は成立・開始されている中で、雇入れた試用期間中に著しく社員として適性を欠く事由があり、今後も継続して雇用していくことに問題がる場合は、企業は、雇入れ間もない期間でもあり、当該労働契約を通常のときよりも解約しやすくする性格のものです。この場合の労働契約の解約は、当然ですが雇い入れた者を「解雇」するということになります。

3.試用期間についてよくある誤解

経営者の中には、試用期間とは、入社後一定期間で、一旦労働契約が終了し、その期間中に能力や適性を判断し、本採用するかどうか再度検討するためのお試し期間であり、社員としての適性がある場合は、正規の労働契約を改めて締結するものであるとの誤解をしている場合があります。もし、そのような運用をしたいのであれば、それは「トライアル雇用」にあたり、求人及び採用時にまず、雇用契約期間が3か月(3か月以内の期間が原則です)であり、お互いにお試しの期間であることを雇い入れする者に明示する必要があります。期間満了時に適性ありと認め、雇入れられた者も引き続いて雇用されたい意思がある場合に改めて期間の定めのない労働契約を締結するものとなります。

4.試用期間で適性のない社員の雇用契約を終了させるには?

試用期間は、解約権留保労働契約期間と言いましたが、その期間、企業はやみくもに労働契約を解約できるものではありません。試用期間中の労働契約の解除とは言え、解雇であることに変わりありません。特に次のような事由があり、試用期間中の解雇事由として就業規則に具体的にさだめがないと不当解雇になる可能性があります。

  1. 採用時には見極めが困難な、業務遂行に重大な影響を与える既往病があることが判明した
  2. 採用時の本人の申告に重大な虚偽があり、雇用の目的を達成できない(例:業務に必要な資格を所有していない、転勤できない家庭の事情があった、職務経歴に明らかな虚偽があり、それがわかっていれば採用しなかった など)
  3. 他の社員と比べ、著しく勤怠が不良である
  4. 他の同種の社員と比べ、組織不適合、協調性や意欲の欠如などが著しい

5.試用期間の短縮・省略・延長を規定する

企業側は、試用期間中に社員としての適性を判断するわけですが、キャリア採用、再雇用、コネ入社など雇入れる者によっては、試用期間を設ける必要がない場合や通常より短い期間でよい場合、また逆に通常の期間では適性の判断がつかない場合があります。このようなときのために就業規則の試用期間の定めには、必要に応じて短縮・省略または延長することのある規定を盛り込んでおくべきです。